【90日のToDo付き】中小企業のAI導入の進め方と最初にやること

この記事で分かること

  • 最初に試す業務と担当者を決め、90日の進行を組み立てる方法
  • 広告抽出・研修の事例から分かる、効果と定着の確かめ方
  • 導入前・試行後・展開前の会議で使えるチェックリスト
【90日のToDo付き】中小企業のAI導入の進め方と最初にやること

中小企業のAI導入の進め方は、負担を減らしたい業務を選び、今の手間を測って試すことが基本です。AI導入とは、AIを仕事の手順に組み込み、担当者が結果を確認して使えるようにすることです。ツールを調べても自社で何から始めるか決まらないときは、業務と担当者を具体的にすると、準備することが見えてきます。この記事では、最初の90日の進め方を実案件とともに解説し、会議で使えるチェックリストを紹介します。

【手順1】中小企業のAI導入は、最初に試す業務と担当者を決める

中小企業のAI導入は、負担を減らしたい業務と、その結果を確認できる担当者を決めるところから始めます。

(1)「誰の、どの作業を減らすか」を言葉にする

最初に試す業務は、担当者が作業の始まりと終わりを説明できる範囲に絞ります。例えば、社員30人の会社で、営業担当者が商談後の報告に追われているとします。「営業をAI化する」だけでは、集める資料も、期待する結果も決められません。

「商談メモから社内報告の下書きを作る」まで絞ると、試す作業が見えてきます。この場合の目的は、報告を確認して提出するまでの手間を減らすことです。下書きが速くできても、事実の訂正に時間がかかるなら使い方を見直します。

担当者との打ち合わせでは、次の点から整理しましょう。

  • どの作業が繰り返し発生し、負担になっているか
  • 何を受け取ると作業が始まり、どこまで進めば終わるか
  • 完成したものを誰に渡し、何を確認してもらうか

「大変な仕事」を尋ねるだけでは、部署全体の問題が集まることもあります。その場合は、直近で作った資料を見ながら、担当者が手を動かした部分をたどります。作業の境目が決まると、今回試すことと、今の方法を続けることを分けられます。

(2)普段の資料で試せて、結果を確かめられる仕事を選ぶ

最初の候補には、手元に資料があり、人が結果の正しさを確かめられる仕事が向いています。例えば、職種ごとの候補は次のように具体化できます。これは選び方を説明する例であり、表の各業務で成果を保証するものではありません。

職種最初に試す作業の例人が確かめること
営業商談メモから報告の下書きを作る発言内容や次の対応が元のメモと合うか
経理請求書と契約内容の違いを拾う違いの理由と、確認が必要な箇所は何か
広告運用条件に合う広告と対応画像を探す抽出条件と画像の組み合わせが合うか

うまくいかなかったときに、今の方法へ戻せるかも選ぶ基準です。会社全体の受注や支払いを一度に切り替えるより、確認してから次へ渡せる範囲で試します。仕事への影響を把握できる範囲なら、担当者も結果を説明しやすくなります。

候補が複数ある場合は、困りごとの大きさだけで順位を決めません。資料を用意する負担や、結果を確認する人の時間も比べます。発生件数が少ない仕事は、作る手間と維持する手間が減らせる時間を上回る可能性もあります。

(3)使う人と、続けるかを判断する人を決める

計画には、実際に使う担当者と、結果を見て継続を判断する人を記載します。担当者は普段の資料を説明し、出力が仕事に使えるかを確かめます。経営者や管理職は、試す時間を確保し、ほかの仕事との優先順位を決めます。

仕組み作りを外部に頼む場合も、社内で確認する役割は必要です。例えば、報告書の体裁を整える作業は外部に頼めても、商談内容が正しいかは担当者が確かめます。依頼する作業と社内に残す作業を分けると、確認待ちになる場所が分かります。

担当者の通常業務の合間に任せきりにすると、資料の準備から止まることがあります。最初の打ち合わせで、結果を一緒に見る日まで相談しましょう。その日には、成功した結果だけでなく、困った資料や判断できない点も持ち寄ります。

【手順2】AI導入の準備では、90日の予定と比較する記録をそろえる

AI導入の準備では、業務整理・試行・定着の順に予定を組み、導入前の作業を記録します。

(1)日数とあわせて、次へ進む条件を決める

次の段階へ進むかは、予定の日付と、その段階で確かめることの両方で判断します。例えば、最初の90日を次のように分けて進めます。これは進行案であり、実案件の所要日数や、導入が完了する期限を示すものではありません。

期間の目安やること次へ進む条件
1〜30日目業務と資料を整理し、今の手間を測る対象業務・担当者・比較する記録がそろう
31〜60日目1業務で試し、出力と残る手間を確かめる使える範囲と、人が確認する点を説明できる
61〜90日目手順書で運用し、継続と展開を判断する担当者が再現でき、効果と維持の負担が分かる

資料がそろわなければ整理を続け、結果の確認に手間がかかれば試す範囲を見直します。予定を変更するときは、何が足りなかったかと、次に確かめることを残します。対象を絞り直す判断も、その後の導入に使える情報です。

月次業務では、締め日から逆算して実際に試す日を決めます。過去の資料で試せても、当月の資料が届く順番や修正への対応は別に確かめる必要があります。業務が発生する日を予定に入れておくと、試行の機会を逃さずに済みます。

(2)準備から確認まで、同じ範囲で時間を測る

導入前後の効果は、仕事の始まりと終わりをそろえて比べます。AIが出力する時間だけでは、担当者の負担が減ったかは分かりません。資料を集める時間や、誤りを直す時間も含めて記録しましょう。

  1. 作業の開始地点と、完了とする状態を決めます。
  2. 処理した件数、作業時間、手直しの内容を記録します。
  3. 使った資料と測定日を残し、導入後も同じ範囲で測ります。

例えば、営業報告なら、メモを探す時間から、確認して提出するまでを追います。導入後に入力用の資料を整える作業が増えたら、その時間も含めます。人が手を動かした時間と、承認などを待った時間は分けると、変化の理由をつかみやすくなります。

担当者の記憶による時間しか分からない場合は、そのことを記録に添えます。見積もった時間と、実際に測った時間を混ぜると、改善したのか判断しにくくなります。件数や資料の難しさが異なる場合も、単純な時間差だけで成果を決めないことが大切です。

(3)使う資料と、完成した出力の見本を用意する

試行には、普段の資料に加えて、判断に迷った資料と完成形の見本を用意します。整った資料だけで試すと、実務で発生する手直しを確かめられません。担当者がいつも立ち止まる箇所を、資料と一緒に説明できると役立ちます。

  • 日常的に使っている資料と、実際の保存場所
  • 記入漏れや表記の違いなど、判断に迷った資料
  • 担当者が確認を終えた出力の見本と、確認した点

完成形を共有すると、「文章は整ったが必要な項目がない」といったずれに気づけます。例えば、営業報告では、読みやすさに加えて次の対応が分かるかも確認対象になります。何を満たせば提出できるかを、担当者の言葉で残します。

試す資料は、利用するサービスで扱ってよい範囲を社内で確認します。実際の資料を使えない段階では、機密情報を含まない例で操作を確かめます。資料の扱いが未確認なら、入力を始める前に確認する担当を決めます。

【手順3】AI導入の試行では、出力の正しさと担当者の再現を確かめる

AI導入の試行では、過去の資料で結果を比べたうえで、担当者が実務で使えるかを確かめます。

(1)同じ資料で試し、合わなかった結果も残す

試行で確かめるのは、出力ができることと、確認を経て仕事を終えられることです。対象業務と必要な出力が決まったら、それに合うツールを比較します。同じ資料と確認項目を使うと、使える範囲の違いを見つけやすくなります。

  1. 過去の資料を使い、担当者が確認済みの答えと比べます。
  2. 合わなかった結果について、違った箇所と直した内容を記録します。
  3. 人が確認する形で、実際の業務に使う範囲を広げます。

結果が合わなかったときは、資料に必要な情報があったかも振り返ります。元の資料に情報がない場合と、出力で読み違えた場合では、直す場所が異なります。判断できなかった結果を消さずに残すと、次の試行で同じ点を確認できます。

出力をそのまま使えない資料があれば、人が引き取る手順を決めます。確認方法を説明できない部分は、試す範囲を絞って確かめ直します。この時点で扱わない資料があることも、試行結果として共有しましょう。

(2)広告抽出の事例では、担当者が手順書で再現した

もちもつの広告抽出支援では、出力の確認に加え、担当者が同じ手順書で再現したことを確認しました。広告の管理データと画像一覧を突き合わせ、条件に合う広告と対応する画像を探す仕組みです。CSVという、表のデータを受け渡すためのファイル形式を使いました。

確認した場面記録にある結果読み取れること
広告データからの抽出979広告から、条件に合う19件を抽出指定した条件で対象を取り出せた
画像との対応付け19件のうち18件はファイル名まで特定すべての対象で特定できたわけではない
担当者による再現2アカウントのデータから1週間分の14件を抽出作り手の手を借りずに手順を再現できた

最初の抽出と担当者による再現は、対象が異なる記録です。件数の増減を性能の改善や悪化として比べることはできません。また、この案件は自動運用には移行していません。

「出力できた」「担当者が使えた」「自動で運用できた」は、別々に確認することです。自社でも、どの段階まで確かめたかを分けて記録すると、導入状況を正確に共有できます。この事例から作業時間の削減幅までは判断できないため、時間の効果は別に測ります。

(3)続ける・絞り直す・止める判断を残す

試行の終了時には、継続する範囲と、未確認のまま残っている点を明確にします。うまく動いた資料だけを見て展開を決めると、次の担当者が同じところで困る可能性があります。処理できなかった資料と、人が直した内容も一緒に振り返ります。

  • 続ける:担当者が結果を確認でき、実務に使える範囲が分かった
  • 絞り直す:特定の資料や作業で、準備・確認の負担が大きかった
  • 止める:減らせる手間に対し、作成や維持の負担が見合わなかった

結果がまだ測れていない場合は、効果がなかった場合と分けます。何を測れば判断できるかが分かっていれば、試行を続ける理由を説明できます。予定だけを延ばすのではなく、次に確かめる資料や作業を決めます。

【手順4】AI導入の定着は、業務手順と維持の負担を確かめて判断する

AI導入を定着させるには、使う場面と確認する役割を手順に入れ、続けるための負担も確かめます。

(1)普段の業務の中に、使うタイミングを置く

AIを使うタイミングは、担当者が普段行っている作業につなげて決めます。例えば、営業報告の下書きなら、商談メモを保存した後に使うと決めます。出力先と提出前の確認項目まで続けて書くと、仕事の途中で迷う箇所を減らせます。

手順書には、操作方法とあわせて次の内容を残しましょう。

  • いつ使い、誰が結果を確認するか
  • 使う資料と、完成したものの保存先
  • 間違いに気づいたときの連絡先と、手作業へ戻す方法
  • 書式や業務ルールの変更を知らせる相手

手順書を渡した後は、担当者に普段の資料で実行してもらいます。作り手が口頭で補足した箇所は、手順書への追記が必要な箇所です。使わなかった日があれば、操作に迷ったのか、対象の仕事がなかったのかを確認します。

(2)研修後は、自分の仕事で着手したかを見る

研修後の定着を確かめるには、受講後に取り組む業務と、その進み具合を見る機会を設けます。もちもつの企業研修では、受講後に各自が取り組む自動化のテーマを決めました。記録にある結果は、次のとおりです。

確認したこと結果
自分の自動化テーマの申告受講者5名全員が期限内に申告
申告したテーマへの着手5名全員が実際に着手

これは全員の業務自動化が完成したという数字ではありません。申告して実際に着手した段階までを示し、削減時間を示す記録でもありません。自社で研修を行う場合も、受講・着手・完成・継続利用を分けて確認します。

次の部署へ広げるときは、最初の担当者が困った資料や、人に残した判断も渡します。同じ業務名でも、資料の書式や確認の基準が同じとは限りません。受け取る担当者が、自分の資料でも同じ手順を使えるかを確かめます。

(3)利用料に加え、準備と維持の手間も振り返る

継続と展開は、減った手間と、使い続けるために必要な費用・手間を並べて判断します。試行前と同じ範囲で測った時間に、確認や修正の記録を添えます。費用はツールの利用料だけでなく、社内の作業も含めて整理します。

費用・手間の種類確認すること
ツールの利用料使う人数・期間・利用量に応じた費用
試行と作成の費用対象業務・扱う資料・作る出力・修正する範囲
社内の作業時間資料の準備・結果の確認・手順を覚える時間
維持の費用と手間書式変更への対応・点検・担当者への引き継ぎ

外部へ依頼する場合は、作業の始まりと終わり、出力の見本を伝えます。例えば、下書きの生成だけを頼む場合と、社内の保存先への登録まで頼む場合は範囲が違います。操作説明や、担当者が再現するまでの修正を含むかも、着手前にそろえます。

効果が測れていなければ、見込みを実績として扱わず、未確認と記載します。確認の手間や維持の負担が増えた場合は、使う範囲を狭めることも選択肢です。続けると決めた範囲と、その判断に使った記録を残しておきます。

【チェックリスト】AI導入の会議で、次へ進む準備を確認する

AI導入のチェックリストは、導入前・試行後・展開前に、決まったことと未確認のことを分けるために使います。

(1)導入前に、対象業務と比較する記録を確認する

導入前は、誰が何を試し、何と比べるかを説明できる状態にします。以下のチェックリストを会議メモにコピーし、決まった項目にチェックを入れましょう。空欄が残った項目には、確認する人と次の確認日を添えます。

  • [ ] 対象業務の始まりと終わり、期待する出力が決まっている
  • [ ] 使う担当者と、結果を確認する人が決まっている
  • [ ] 使ってよい資料と、判断に迷った資料を用意している
  • [ ] 導入前の件数・時間・手直しの内容を記録している

(2)試行後に、使える範囲と残る手間を確認する

試行後は、成功した結果と、うまくいかなかった結果の両方を根拠に判断します。チェックが入らない項目があれば、どの資料や作業で困ったかを残します。確認する内容が具体的なら、次の試行で何を直すかも決めやすくなります。

  • [ ] 担当者が出力を確認し、仕事に使える範囲を説明できる
  • [ ] 処理できなかった資料と、人が手直しした内容を残している
  • [ ] 準備から確認まで、導入前と同じ範囲で手間を測っている
  • [ ] 続ける・絞り直す・止める判断と、その理由を残している

(3)展開前に、担当者の再現と維持の役割を確認する

展開前は、作り手が隣にいなくても、担当者が確認を経て仕事を終えられるかを確かめます。操作できたことに加え、迷ったときの対応まで確認します。次の部署に渡す際も、この欄を使って準備を見直せます。

  • [ ] 担当者が手順書を使い、普段の資料で作業を再現している
  • [ ] 間違いがあったときの連絡先と、元の方法に戻す手順がある
  • [ ] 書式変更への対応や引き継ぎを、誰が行うか決まっている
  • [ ] 効果・費用・維持の手間を並べ、広げる範囲を決めている

よくある質問

中小企業のAI導入は、対象業務と確認する担当者を絞り、手元の資料で確かめるところから始められます。

(1)AIに詳しい社員がいなくても始められますか?

始められますが、普段の業務と出力の正しさを確認できる担当者は必要です。仕組み作りを外部に頼む場合も、資料の説明と結果の確認は社内の役割として残します。

(2)AIツールは無料版で試してもよいですか?

無料版かどうかより、試す資料をそのサービスで扱ってよいかを先に確認します。利用条件と社内ルールを確認し、機密情報を含まない例で操作を確かめるところから始めます。

(3)最初の90日で全社導入まで進めるべきですか?

最初の90日で全社導入まで進める必要はありません。最初の業務で担当者が再現でき、効果と残る手間を説明できる状態を目指します。判断材料が足りなければ、試行を延ばすか、対象を絞り直します。

(4)AI導入の費用をかける前に何を準備すればよいですか?

対象業務の流れ、使う資料、今の作業時間、期待する出力をそろえます。不明な点は未確認として残し、依頼する作業と、試行で確かめる作業を分けます。

次にやることは、担当者と業務を見て最初の確認日を決めること

明日取り組むことは、担当者と普段の作業を見て、試す業務と最初の確認日を決めることです。

(1)普段の資料を見ながら、試す範囲を決める

最初の打ち合わせでは、対象業務・比較する記録・次の確認日を決めます。完成した計画を用意する前に、次の順番で準備しましょう。

  1. 負担を減らしたい業務を担当者と選び、作業を見せてもらいます。
  2. 資料と出力の見本を用意し、今の手間を記録し始めます。
  3. チェックリストで未確認の点を整理し、結果を見る日を決めます。

資料をそろえる作業が重い、人によって完成の基準が違う、といった問題が見つかることもあります。その場合は、どこを整理すれば試せるかを決めるところから取り組めます。

(2)自社でどこから始めるか迷ったら、業務と負担を相談する

自社に合う試行の範囲が決まらない場合は、普段の業務と担当者の負担から整理できます。もちもつの無料相談では、最初に試す業務と、効果を確かめる方法を一緒に考えます。ツールが決まっていなくても、今どこで仕事が止まっているかから話を始められます。

自社の場合はどうなのか、気になった方へ

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現状をうかがったうえで、論点を一緒に整理します。

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