【チェックリスト付き】ChatGPTの社内展開の進め方|個人利用から全社へ
この記事で分かること
- 個人利用と全社展開で、何が変わるのかが分かる
- 自分の使い方を人に渡せる形にして、最初の範囲を絞る手順
- 展開前に会議で確認できるチェックリストと、広がったかの測り方

ChatGPTの社内展開とは、経営者や一部の担当者が個人で使っている生成AIを、社員が自分の仕事で使える状態にすることです。「自分は日常業務で使っているが、今後は社員も使える形にして、情報共有や事務作業の効率化につなげたい」という相談は、中小企業で多くあります。生成AIの全社導入の進め方は、自分の使い方を人に渡せる形にし、最初の範囲を絞って、ルールと使う場面を先に決めることです。この記事では、個人利用から全社展開までの手順4つと、会議で使えるチェックリストを紹介します。
個人利用と全社展開では、決めることが変わる
個人利用と全社展開の最大の違いは、使い方の上手さではなく、使う人が増えても同じ結果が出る仕組みがあるかどうかです。
(1)個人利用は、判断も確認も本人が1人で行っている
個人で使えているのは、使う場面を選ぶ人と、結果を確かめる人が同じだからです。経営者や担当者は、頼み方を工夫し、出力が怪しければ自分で直せます。その判断は頭の中にあり、本人も言葉にしていないことが多くあります。
社員に「使ってみてください」と伝えるだけでは、その判断が渡りません。ツールを配っただけでは使われないことが、もちもつが現場で見てきた典型的なつまずきです。使う場面が決まっていないと、触ってみた社員も、何を頼めばよいか分からないまま止まります。
(2)全社展開では、4つのことを仕組みにする
全社展開で増えるのは、「誰が」「何に」「どんなルールで」使い、「どう確かめるか」です。個人利用と比べると、次の点が変わります。
| 観点 | 個人利用 | 全社展開 |
|---|---|---|
| 使う場面 | 本人がその都度選ぶ | 業務ごとに「ここで使う」と決める |
| 入れてよい情報 | 本人の感覚で判断する | 会社として線を引き、全員が同じ基準で判断する |
| 結果の確認 | 本人が見て直す | 誰が何を確認するかを決める |
| 困ったとき | 自分で調べる | 相談先と、元の方法に戻す手順がある |
この表のうち、個人利用でできていることを、右の列に移す作業が社内展開です。ツールの契約や設定より先に、この4つを決めると、展開が止まりにくくなります。
「情報共有」と「事務作業の効率化」を同時に目指すときも、順番は同じです。共有したい情報の種類と、減らしたい事務作業を別々に書き出し、どちらか1つから始めます。2つを同時に広げると、どちらの結果を見ればよいのかが曖昧になります。先に1つ、担当者が自分の資料で使えるところまで確かめてから、もう1つへ移りましょう。
【手順1】自分が使っている場面を棚卸しして、人に渡せる形にする
最初にやることは、社員に配ることではなく、自分が何にどう使っているかを書き出すことです。
(1)使っている場面を、業務の名前で書き出す
社内展開の材料は、すでに自分が成果を出している使い方です。直近1か月に使った場面を、次のように書き出します。
- 何の業務で使ったか(例: 打ち合わせ後の議事録の整理)
- 何を渡して、何を頼んだか
- 出てきた結果を、どこまで直したか
- その業務は、月に何回発生するか
思い出せる範囲で構いません。書き出すと、「便利だが月に1回しかない作業」と、「毎週発生して手間がかかる作業」が分かれます。件数が少ない業務は、仕組みを作る手間と維持する手間が、減らせる時間を上回ることがあります。
(2)自分の頼み方を、見本として残す
人に渡すのは、ツールの説明ではなく、頼み方と直し方の見本です。成果が出ている場面ごとに、次の3つを1枚にまとめます。
- 頼むときに渡す資料と、頼み方の文面
- 出力のうち、必ず自分で確かめている箇所
- うまくいかなかった例と、そのときの直し方
自分では当たり前にやっている確認が、社員には見えていません。「数字は元の資料と突き合わせる」「固有名詞は必ず見直す」といった一言も、見本に入れておきましょう。
(3)自分以外が使う場合に、困りそうな点を先に拾う
自分が使えている理由を分解すると、社員に足りない点が見えます。例えば、社員30人の会社で経営者が議事録の整理に使っているとします。経営者は、会議の背景を知っているので、出力の抜けにすぐ気づけます。同じ作業を新入社員に任せると、抜けに気づけない可能性があります。これは仮の例ですが、「誰が確認するか」を決める理由として、そのまま当てはまります。
【手順2】最初に広げる範囲を絞り、ルールを先に決める
社内展開は、全員に同時に配るより、1つの業務・1つのチームで先に動かすほうが確かめやすくなります。
(1)最初の範囲は、1業務・数人に絞る
もちもつの現場では、全社導入から始めた会社より、1業務だけ切って始めた会社のほうが、結果的に速く進みました。最初の範囲は、次の条件を満たす業務から選びます。
| 条件 | 見るポイント |
|---|---|
| 発生頻度 | 週に何度か発生し、手間を感じている |
| 資料の有無 | 普段の資料が手元にあり、渡し方が決まっている |
| 確認のしやすさ | 結果を、人が元の資料と見比べて確かめられる |
| 戻しやすさ | うまくいかなければ、今の方法に戻せる |
「社内の情報共有」「事務作業の効率化」のように範囲が広いままだと、何を試すか決まりません。「会議後の議事録を共有フォルダに置くまで」のように、始まりと終わりを決めて絞ります。
(2)入れてよい情報の線を、展開の前に引く
情報の扱いは、使い始めた後ではなく、配る前に決めます。社員が迷うのは、使い方より「これを入れてよいのか」です。迷う場面で止まるか、黙って入れてしまうかの、どちらも避けたい状態です。
決めておく内容の例は、次のとおりです。
- 入れてよい情報と、入れてはいけない情報(顧客名・個人情報・契約内容など)
- 利用するサービスと、会社として使ってよいアカウントの種類
- 迷ったときに確認する相手
- 出力を社外へ出す前に、人が見る手順
サービスの契約形態や、入力した情報の扱いは、利用するサービスの公式の説明を確認して決めます。自社の判断を外部の情報だけに頼らず、社内のルールとして文章に残しましょう。
(3)使う人と、続けるかを決める人を分ける
計画には、実際に使う担当者と、結果を見て判断する人を、別々に書きます。担当者は、普段の資料で使ってみて、仕事に使えるかを確かめます。経営者や管理職は、試す時間を確保し、他の仕事との優先順位を決めます。
担当者の合間の時間に任せきりにすると、資料の準備から止まることがあります。最初に、結果を一緒に見る日を決めておくと、止まった理由を早く拾えます。
【手順3】社員が使える状態にするには、使う場面を業務の流れに埋める
社員が使う状態にするには、操作の説明より、仕事のどの時点で使うかを手順に入れることが重要です。
(1)「いつ・誰が・何に」を、業務手順に1行入れる
使う場面が業務の流れに書かれていれば、社員は迷わずに使い始められます。例えば、議事録の整理なら、次のように手順書へ入れます。
- 打ち合わせの後、メモを共有フォルダに保存する
- メモをChatGPTに渡し、議事録の下書きを作る
- 担当者が、決定事項と期限を元のメモと見比べて直す
- 直したものを、所定の場所に保存する
手順書には、使う資料、確認する点、間違いに気づいたときの連絡先も添えます。操作方法だけを書いた資料は、読まれても、使う場面が決まらないままです。
(2)研修は「受けて終わり」にせず、自分の仕事での着手まで見る
研修を行う場合は、受講後に各自が取り組む業務を決め、着手したかを確認します。もちもつの企業研修では、受講者5名全員が期限内に「自分が自動化するテーマ」を申告し、実際に着手しました。これは、全員の業務が完成したという意味ではありません。申告と着手までを確認した記録であり、削減できた時間を示すものではありません。
研修の後に、自分の仕事でどう使うかが決まっていないと、知識だけが残ります。受講、着手、完成、継続利用を分けて確認すると、止まる場所が見えます。
(3)広告運用の担当者が、手順書だけで再現した例
社内で定着したかは、作った人が隣にいなくても担当者が再現できるかで確かめられます。もちもつが関わった広告運用会社の案件では、広告の管理データから成果の良い広告を抽出する手順を、先方の担当者が手順書だけで再現しました。2アカウント分のデータを統合し、1週間分の14件を抽出するところまで、担当者が自分で進めました。
この事例から、作業時間の削減幅までは判断できません。分かるのは、手順書があれば、担当者が自分の資料で同じ手順を実行できた、ということです。社内展開でも、操作できたことに加えて、手順書で再現できたかを確認項目にします。
【手順4】広がったかは、使われた回数と手間の変化で確かめる
展開後は、「導入した」ではなく、使われているかと、手間が変わったかを測って判断します。
(1)展開の前に、今の手間を記録しておく
効果は、始める前の手間を記録していないと、後から比べられません。導入した後に効果を測っていない現場は多く、もちもつ自身も含めて、数字で語れる案件が少ない原因になっています。最初の範囲に決めた業務について、次の3点を記録します。
- 業務の始まりと、完了とする状態
- 1件あたりにかかる時間と、処理した件数
- 手直しや確認に使った時間
AIが出力する時間だけでなく、資料を集める時間や、誤りを直す時間も含めます。記憶で答えた時間と、実際に測った時間は、混ぜずに分けて記録しましょう。最初の2週間だけでも測っておけば、展開後に「減ったのか、増えたのか」を同じ範囲で比べられます。測る負担が大きい場合は、件数だけでも先に数えておきます。
(2)使われた回数と、止まった場面を見る
広がったかの確認は、利用者の人数より、仕事の中で使われた回数と、止まった理由を見ます。次のように、段階を分けて見ると、止まった原因を判断しやすくなります。
| 状態 | 確認すること | 次の対応 |
|---|---|---|
| 一度も使われていない | 使う場面が手順に入っているか | 手順書に場面を書き足す |
| 使われたが、続かない | 確認や直しの負担が大きくないか | 頼み方の見本を見直す |
| 使われているが、手間が減らない | 準備や確認の時間が増えていないか | 範囲を絞り直す |
| 担当者が再現できている | 他のチームにも渡せるか | 次の業務へ広げる |
(3)広げる・絞る・止めるを決めて、記録に残す
判断の結果は、理由と一緒に残し、次の業務を選ぶときに使います。
- 広げる: 担当者が再現でき、効果と維持の手間が説明できる
- 絞り直す: 特定の資料や作業で、準備や確認の負担が大きい
- 止める: 減らせる手間に対し、作成や維持の手間が見合わない
効果がまだ測れていない場合は、効果がなかった場合と分けて記録します。測れていないことを、成果として扱わないことが重要です。
【チェックリスト】社内展開の会議で、確認する項目
社内展開の会議では、展開前・展開中・展開後の3つに分けて、決まったことと未確認のことを分けます。
(1)展開前に確認すること
展開前は、自分の使い方が人に渡せる形になっているかを確認します。チェックが入らない項目には、確認する人と日付を添えます。
- [ ] 自分が使っている場面を、業務の名前で書き出している
- [ ] 頼み方と、必ず確かめる箇所を、見本として1枚にまとめている
- [ ] 最初に広げる業務と、担当者が決まっている
- [ ] 入れてよい情報の線と、迷ったときの相談先が文章になっている
(2)展開中に確認すること
展開中は、社員が使う場面で迷っていないかを確認します。
- [ ] 使う場面が、業務の手順書に書かれている
- [ ] 結果を確認する人と、確認する点が決まっている
- [ ] 間違いに気づいたときの連絡先と、元の方法に戻す手順がある
- [ ] 展開前の手間を、同じ範囲で記録している
(3)展開後に確認すること
展開後は、使われた回数と、担当者が再現できているかを確認します。
- [ ] 担当者が、手順書だけで普段の資料に使えている
- [ ] 使われなかった場面と、止まった理由を記録している
- [ ] 効果と、維持にかかる手間を並べて、判断している
- [ ] 広げる・絞る・止めるの判断と、その理由を残している
よくある質問
社内展開は、小さな範囲で確かめてから広げるのが基本です。
(1)全社員に一斉にアカウントを配ってもよいですか?
配ること自体はできますが、先にルールと使う場面を決めておく必要があります。一斉に配ると、使い方が人によって分かれ、問題が起きたときに原因を追いにくくなります。最初は1業務・数人で確かめることをお勧めします。
(2)社員が使いたがらないときはどうすればよいですか?
使いたがらない理由が、操作なのか、使う場面がないのか、不安なのかを分けて聞きます。場面がない場合は、手順書に使う場面を入れます。情報の扱いへの不安が理由なら、入れてよい情報の線を先に伝えます。
(3)経営者自身が使い込んでいないと、展開は難しいですか?
使い込んでいなくても進められますが、使う業務を理解している担当者は必要です。経営者が全部を知っている必要はありません。業務を知る担当者と、続けるかを判断する人を決めることが大切です。
(4)ChatGPTのどのプランを選べばよいですか?
プランの前に、使う業務と入れる情報の範囲を決めます。プランの内容や条件は変わることがあるため、契約前に公式の説明で確認してください。業務と情報の範囲が決まれば、必要な機能が絞れます。
次にやること
明日取り組むのは、自分が使っている場面を3つ書き出し、最初に広げる業務を1つ決めることです。
(1)手元の使い方を、見本にする
まず、自分が成果を出している使い方を、人に渡せる形にします。
- 直近1か月に使った場面を、業務の名前で書き出します。
- 月に何回発生し、どこで手間がかかっているかを書き添えます。
- 1つ選び、頼み方と確認する点を1枚にまとめます。
(2)自社でどこから広げるか迷ったら、業務と担当者から整理する
最初の範囲や、ルールの決め方に迷う場合は、普段の業務と担当者の状況から整理できます。もちもつの無料相談では、今どの業務で使われているかを伺い、最初に広げる範囲と、確かめ方を一緒に考えます。ツールや契約が決まっていなくても、個人での使い方の整理から始められます。
もちもつでは、業務の選定から現場で使われ続けるところまでを伴走する中小企業のAI導入支援を行っています。