【一覧表付き】中小企業のAI導入事例|経理・営業・採用など職種別7例
この記事で分かること
- 経理・営業・マーケティング・採用人事で実際に取り組んだ7事例
- 確認する行の割合や整備済み件数など、成果の数字が示す範囲
- 自社で試す業務と必要な資料を整理するチェックリスト

中小企業のAI導入事例は、担当者が繰り返す作業に注目すると、自社に当てはめやすくなります。ここでのAI導入とは、AIを含む仕組みを実際の業務手順に組み込むことです。本記事では、もちもつの支援事例と自社利用の記録から、職種別に7例を紹介します。数字で確認できた成果と、そのまま使えるチェックリストをもとに、試す業務を考えます。
中小企業のAI導入事例は「任せた作業」と「成果」で読みます
AI導入事例を自社と比べる際は、任せた作業と、結果として何を測ったかを確認します。
(1)職種よりも、普段の作業が似ているかを見ます
自社への当てはめでは、担当者が何を見比べ、何を仕上げているかが手がかりになります。例えば、経理の照合と広告素材の抽出は、どちらも別々の資料を突き合わせる仕事です。業種が違っても、普段の作業に共通点があれば検討の入口になります。
| 職種 | 取り組んだ業務 | 確認できた成果の種類 |
|---|---|---|
| 経理 | 請求書と契約の照合/申込と入金の照合 | 目視確認割合/氏名カナの自動確定割合 |
| 営業 | 公式サイト調査/名刺・リスト整備 | 特定できた割合/整備済みの割合 |
| マーケティング | 条件に合う広告素材の抽出 | 抽出件数と担当者による再現 |
| 採用・人事 | 一次返信/研修後の実務への接続 | 本番稼働/テーマの申告と着手 |
事例の従業員数は確認できていません。会社全体の人数に代えて、記録にある支店数や処理対象の件数を示します。
(2)成果の割合を、そのまま時間削減率にしません
確認対象の割合、整備済みの割合、着手した人数は、それぞれ別の成果です。割合が高くても、残った確認に手間がかかる場合があります。自社で試すときは、次の情報を一緒に記録しましょう。
- 何を対象に、どの時点で測った数字か
- 資料の準備や、結果の確認にかかった時間
- 自動で終わらず、人に戻った作業の内容
経理・事務のAI業務効率化事例は、人が確認する対象を絞りました
経理・事務では、請求書と契約、申込と入金を照合し、人の確認が必要な対象を分けています。
(1)請求書チェックで、目視確認が必要な行を抽出しました
請求書照合で変わったのは、経理が目を通す範囲です。広告代理店の経理が、支店ごとの請求書と契約内容を突き合わせていた案件です。導入後は、目視で確かめる必要のある行を取り出しています。
| 項目 | 記録にある内容 |
|---|---|
| 対象 | 広告代理店・3支店規模 |
| 導入前 | 関西支店だけで約560行、手作業で月2日 |
| 関西の結果 | 目視確認割合88%→17%(625行中106行) |
| 東京中央の結果 | 目視確認割合82%→28%(147行中41行) |
| 検出内容 | 契約終了後も請求書に載っていたケース4件 |
導入前の行数と、導入後の確認対象を数えた行数は異なります。各割合の測定時期も未確認で、同月・同一対象の比較とはしていません。削減後の作業時間は未計測のため、「月2日の作業が何時間になった」とは言えません。
自社で検討するなら、請求書と契約台帳を並べ、次の点を確認しましょう。
- 請求の根拠になる契約情報は、どこにあるか
- 契約終了や変更を、どの資料に記録しているか
- 照合後、誰が内容を確認して支払いを承認するか
確認する行を絞ることと、支払いの承認を無人化することは別です。普段の承認手順も含めて見ると、任せたい範囲が具体的になります。
(2)入金照合で、氏名カナの照合を自動確定しました
入金照合では、読み取れた情報と、照合を確定できた情報を分けて評価します。消し込みとは、入金と申込などを対応させ、支払い済みかを確かめる作業です。研修申込の案件では、申込内容の読み取りと氏名カナの照合、入金通知の取り込みを行いました。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 処理対象 | 実データ940名 |
| 申込内容の読み取り | 100% |
| 氏名カナの照合 | 95%自動確定 |
| 人の確認が必要だった対象 | 21組45名 |
読み取りができても、誰の入金かを判断できるとは限りません。自社で試す際には、例えば法人名で振り込まれた場合の確認方法も材料になります。担当者が名前の違いをどう解決しているかまで聞くと、人に残す確認を整理できます。
営業のAI導入事例は、連絡先調べとリスト整備を進めました
営業では、公式サイトや問い合わせ先の調査と、名刺・リストの整備で結果を確認しています。
(1)会社名から公式サイトと問い合わせ先を調べました
営業調査の事例で示せるのは、問い合わせ先などを特定できた範囲です。会社名から公式サイト・問い合わせフォーム・連絡先を調べる仕組みです。顧客の成果ではなく、もちもつ自身の営業で使っている事例として紹介します。
| 項目 | 記録にある結果 |
|---|---|
| 集計時点 | 247社のうち172社を処理した時点 |
| 公式サイトの特定 | 100% |
| 問い合わせフォームの特定 | 87% |
対象全社の処理が終わった結果ではありません。また、連絡先の特定と、実際の連絡、商談の獲得は別の段階です。この数字を受注の増加や商談化率としては扱いません。
自社で同じように検索を繰り返しているなら、調査後の使い方まで整理しましょう。
- 元のリストにある会社名や所在地などの情報
- 調べた結果を書き込む項目
- 候補が複数見つかったときの確認方法
(2)名刺とCSVを取り込み、重複を統合しました
リスト整備では、情報を統合する作業と、不足を調べる作業を分けて考えます。名寄せとは、別々の資料にある同じ人物や会社の情報をまとめることです。この案件では、CSV2種と名刺スキャンを取り込み、ファイルをまたぐ重複を検知・統合しました。
CSVは、表のデータを受け渡すためのファイル形式です。経営者マスターリスト17,336件のうち、77%が整備済みになっています。さらに、手元の情報による会社特定の割合も測りました。
| 会社を調べる手がかり・方法 | 特定できた割合 |
|---|---|
| 企業独自ドメインのメールから逆引き | 約44% |
| 名刺交換相手のWeb調査 | 約26% |
| 氏名のみのWeb検索 | 約3% |
ドメインは、メールアドレスの「@」より後ろなどに使われる識別名です。この結果は、どこまで追加調査をするかを考える材料になります。整備済みの割合や会社特定の割合を、時間削減率や営業成果には置き換えません。
マーケティング・採用・人事では、抽出や一次対応、実務への着手を支援しました
広告抽出、採用の一次返信、研修後の着手では、それぞれ異なる段階の成果を確認しています。
(1)広告素材を抽出し、担当者が同じ手順で再現しました
広告抽出の事例では、条件に合う素材を取り出し、先方担当者も再現できました。広告運用会社の案件で、管理画面のCSVと画像一覧を突き合わせています。CPAは成果獲得あたりの費用、CVは申込など成果として数える行動です。
| 項目 | 記録にある内容 |
|---|---|
| 対象 | 管理画面979広告と画像一覧 |
| 抽出条件 | CPA11,000円以下かつCV5件以上 |
| 抽出結果 | 19件を抽出、うち18件はファイル名まで特定 |
| 担当者による再現 | 2アカウント分を統合し、1週間分で14件を抽出、3ファイルを出力 |
担当者は、同じ手順書で自分だけで再現しています。最初の抽出とは対象データが異なるため、件数の増減を性能比較には使いません。自動運用には移行しておらず、広告による売上改善を測った数字でもありません。
自社でも数値を見た後に画像を探しているなら、次の対応関係を確認しましょう。
- どの条件で広告を取り出したいか
- 広告名と画像のファイル名を、何で結び付けられるか
- 抽出結果を誰が確認し、次の広告にどう使うか
(2)採用の一次返信を本番で稼働させました
採用の事例で自動化したのは、決めたキーワードへの一次返信です。児童発達支援事業者の採用用LINE公式アカウントを構築しました。キーワード12件への自動の一次返信を、本番で稼働させています。
この件数は、対応するキーワードの数であり、応募者数や採用人数ではありません。日程調整は自動化していません。自社で検討するときも、普段の返信を次のように分けると範囲が見えてきます。
- 同じ内容で返せる案内
- 応募者ごとに担当者が判断する返答
- 自動返信の後、人が引き継ぐやり取り
(3)研修後に、自分の業務の自動化へ着手しました
研修では、受講者5名全員が期限内に自動化テーマを申告し、実際に着手しました。各自が取り組む仕事を決め、申告して着手するところまでを設計に含めた事例です。確認できたのは行動に移ったことで、完成や長期の継続利用、時間削減までは示していません。
自社で研修を企画するなら、学んだ内容をどの仕事に使うかまで話し合いましょう。受講後の感想に加え、着手した業務名と進んだ段階を聞くと、次の支援を考えられます。
【チェックリスト】自社で試す業務と必要な資料を整理します
AI導入の候補は、使う資料、人に残す判断、確かめたい成果を書き出すと具体的になります。
(1)担当者と確認し、分からない項目を残します
チェックが付かない項目は、試す前に担当者と整理する論点です。以下をコピーし、候補の業務について分かる項目にチェックを入れます。すべて埋まることを相談の条件にする必要はありません。
- [ ] 担当者が繰り返している作業を、業務名で言える
- [ ] その作業の件数と、発生する頻度を確認できる
- [ ] 入力に使う資料と、作業後の完成見本がある
- [ ] 照合や判断の根拠になる台帳・ルールが分かる
- [ ] 例外として人に戻す内容と、確認する担当者を決められる
- [ ] 準備・確認・手直しも含めて、作業時間を記録できる
例えば請求書照合なら、請求書だけでなく契約を確かめる資料も必要です。営業リストなら、元の名簿と、調査後に埋めたい項目が材料になります。資料が不足している場合は、何が足りないかをそのままメモに残せます。
よくある質問
AI導入事例の数字は、自社で試す範囲を考える参考であり、同じ成果を保証するものではありません。
(1)同じ業務なら、同じAI導入効果が出ますか?
同じ業務でも、同じ効果が出るとは限りません。資料の状態や確認ルールが違うため、自社の資料で試して残る手間を確かめます。
(2)生成AIの活用事例と、自動化の事例は同じですか?
生成AIは文章や画像などを作るAIで、自動化は作業を自動で進めることです。本記事には照合やキーワードへの返信を仕組みにした例も含み、すべてを生成AIだけの成果とはしていません。
(3)事例の数字を、削減できる人件費に換算できますか?
今回の数字だけでは、人件費の削減額に換算できません。確認割合や整備済みの割合を時間削減率にせず、自社で準備や確認を含む作業時間を測る必要があります。
(4)相談前に使うAIツールを決める必要はありますか?
相談前にツールを決めておく必要はありません。今使っている資料と困っている作業をもとに、何を任せたいかを整理するところから相談できます。
自社に近い業務を選び、担当者と作業を確かめましょう
次にやることは、自社に近い事例を選び、担当者が使う資料と確認の手順を見ることです。
(1)今の資料と、判断に迷う箇所をそろえます
業務名だけでなく、実際の資料と迷う箇所が分かると、試す範囲を具体的にできます。明日は、次の順番で着手しましょう。
- 自社に近い業務を選び、担当者に普段の作業を見せてもらう
- 入力する資料と完成見本をそろえ、チェックリストを確認する
- 判断に迷う箇所と、人に残したい確認をメモする
自社の業務でどこまで任せられるかは、もちもつの無料相談で一緒に整理できます。今の資料と確認の手順をもとに、仕組みに任せる範囲と、試して確かめる点を考えます。「うちの経理にも、この作業がある」という段階から相談できます。