【判定表付き】生成AIのハルシネーション対策|仕事での確かめ方
この記事で分かること
- ハルシネーションとは何か、なぜ仕事で起きると困るのか
- 確認の深さを仕事ごとに決める判定表
- AIの答えを使う前に通す、確かめ方のチェックリスト

生成AIのハルシネーション対策は、間違いを出させない工夫より、間違いが混ざっても外に出ない確かめ方を決めておくことです。ハルシネーションとは、生成AIが事実と違うことを、もっともらしい言い方で答えてしまう現象のことです。この記事では、仕事で使うときの確認の判定表、間違いの見つけ方と直し方、使う前のチェックリストを紹介します。読み終えたときに、自社のどの仕事で、誰が、何を見比べるのかを決められる状態を目指します。
生成AIのハルシネーションとは、もっともらしい間違いのこと
ハルシネーションは、AIが「知らない」と言わずに、それらしい答えを作ってしまうことで起きます。生成AIとは、文章や画像などを、人の指示に応じて作り出すAIのことです。
(1)起きやすい間違いの種類
間違いは、数字、固有名詞、出典、日付の4か所に混ざりやすい性質があります。文章の流れが自然なので、読んだ人は間違いに気づきにくくなります。
| 種類 | 起きること | 仕事での例 |
|---|---|---|
| 数字 | 存在しない数字や、計算違いの数字が入る | 見積書の合計、売上の前年比 |
| 固有名詞 | 実在しない会社名・人名・製品名が入る | 取引先の紹介文、競合の比較 |
| 出典 | 存在しない資料や条文を挙げる | 調査資料の要約、社内の根拠づけ |
| 日付・制度 | 古い情報や、別の制度の説明が混ざる | 手続きの案内、社内ルールの説明 |
(2)なぜ間違いが混ざるのか
生成AIは、事実を検索して答えるのではなく、もっともらしい文章の続きを作る仕組みだからです。そのため、知らないことでも、知っているかのように答えてしまうことがあります。どのサービスでどの程度起きるかは、ツールや設定、頼む内容で変わります。仕様は各社の公式の説明で確認し、「起きない」とは考えないほうが安全です。
(3)仕事で困るのは、間違いそのものより「確認なしで外に出ること」
生成AIが間違うこと自体は、使う前に見つけられれば、仕事の損失にはなりません。困るのは、見つけないまま、お客様や取引先に届いてしまうときです。人が書いた文書でも間違いは混ざります。対策の考え方は、AIの答えを「自分の担当者が書いた下書き」として扱い、出す前に確かめる流れを仕事に入れることです。
対策の基本は、AIを疑うことではなく、確かめる手順を決めること
ハルシネーション対策の基本は、全部を疑う姿勢ではなく、確認の深さを仕事ごとに決めることです。全部を同じ深さで確認すると、時間がかかって、使われなくなります。
(1)確認の深さは「外に出るか」と「間違えたときの影響」で決める
確認の深さは、答えがどこまで届くかと、間違えたときに何が起きるかの2つで決まります。社内のメモなら、間違っていても、すぐ直せます。お客様に出す見積書や契約に関わる文書は、間違いが後から取り消せません。
(2)確認する人は、AIに頼んだ本人とは別にする場面を決めておく
影響の大きい文書は、頼んだ本人だけで確認しません。自分で頼んだものは、自分の期待に沿って読んでしまうためです。全部の文書に第三者を付ける必要はありません。金額や契約に関わる文書だけ、もう一人が読む決まりにします。
(3)「AIにAIの答えを確認させる」は補助にとどめる
同じAIや別のAIに「この答えは正しいですか」と聞いても、確認の代わりにはなりません。聞いたAIも、もっともらしく答えるためです。一方で、「根拠にした部分を引用してください」「前提を3つ挙げてください」と頼むと、人が見比べる場所が見つけやすくなります。最後に見比べるのは、元の資料や公的な情報を見られる人です。
【判定表】仕事ごとに、確認の深さを決める
判定表の目的は、仕事ごとに確認の深さを先に決めて、毎回迷わないようにすることです。次の表の「届く範囲」と「間違えたときの影響」で、自社の仕事を当てはめます。
(1)確認の深さを決める判定表
判定は、影響が大きいほど深く、届く範囲が広いほど深くします。
| 届く範囲 | 間違えたときの影響 | 確認の深さ | 仕事の例 |
|---|---|---|---|
| 自分だけ | 小さい。すぐ直せる | 流し読み。気になる数字だけ見る | 考えの整理、アイデア出し |
| 社内の複数人 | 小さい〜中。誤解が広がる | 数字・固有名詞・日付を元の資料と見比べる | 議事録の整理、社内向けの連絡文 |
| 社外(お客様・取引先) | 中。信用に関わる | 全項目を元の資料と見比べ、担当者が読む | 提案書、お知らせ文、見積の説明 |
| 契約・金額・法令に関わる | 大きい。取り消せない | 元の資料と全項目を照合し、もう一人が確認する。必要なら専門家に確認する | 契約書の案、請求書、制度の説明 |
(2)判定表の使い方
判定表は、仕事ごとに1回だけ決めて、社内で共有します。次の手順で、10分ほどで作れます。
- AIに頼んでいる仕事を、5つ書き出す
- 各仕事の「届く範囲」と「間違えたときの影響」を表に当てはめる
- 確認の深さと、確認する人の名前を書く
- 見直す時期を決める(例: 3か月後)
(3)迷ったときは、深いほうに寄せる
迷う仕事は、1段深い確認にしておきます。最初に深くしておき、間違いが出なかった実績が貯まってから、浅くするほうが安全です。逆に、最初から浅くすると、間違いが出てから深くすることになります。
間違いを見つける確かめ方|5つの見比べ方
確かめ方の基本は、AIの答えを、元の資料と見比べることです。読んで「納得できる」かどうかは、確認になりません。
(1)数字は、計算し直して、元の資料と見比べる
数字は、AIが出した合計や割合を、自分の手で計算し直します。元の資料の数字と、桁と単位が合っているかも見ます。表計算ソフトに数字を移して、足し算と掛け算を確かめるだけでも、見つかる間違いがあります。
(2)固有名詞と日付は、公式の情報で調べる
会社名、人名、製品名、日付は、公式のサイトや原本で調べ直します。AIの答えにある固有名詞を、そのまま検索できるかを確認する方法が、いちばん手軽です。見つからないものは、実在しないものとして扱います。
(3)出典は、自分で開いて、書いてある場所まで確かめる
AIが挙げた出典は、リンクや資料を自分で開いて、書かれていることまで確かめます。資料の名前が実在しても、中身が違うことがあるからです。開けない出典は、使いません。
(4)制度や法令は、所管の公式の情報で確かめる
制度や法令の説明は、AIの答えを根拠にしません。官公庁や各制度の公式のページで、最新の内容を確認します。判断が必要な場面は、専門家に相談するのが確実です。この記事でも、特定の制度の内容は説明しません。
(5)「根拠」と「確からしさ」を聞いて、見比べる場所を絞る
AIに根拠を答えさせると、人が見比べる場所を狭められます。例えば、次のように頼みます。
上の答えのうち、元の資料に書かれていることと、あなたの推測を分けてください。
推測の部分は「推測」と付けてください。
分けられた「推測」の部分が、人が優先して確かめる場所です。ただし、AIが「元の資料に書かれている」と言った部分も、見比べる手順は省きません。
間違いを減らす頼み方|元の資料を渡して、範囲を絞る
頼み方を変えると、間違いは減らせますが、なくすことはできません。頼み方の工夫は、確認の手順の代わりではなく、確認の負担を軽くするために使います。
(1)元の資料を渡して、「その資料の範囲で答えて」と頼む
資料を渡して、範囲を限ると、AIが推測で埋める場面を減らせます。次の頼み方のひな形が使えます。
以下の資料だけを根拠にして、〈やりたいこと〉をしてください。
資料に書かれていないことは「資料に記載なし」と書いてください。
〈ここに資料を貼る〉
(2)AIに任せる範囲を、小さく切る
「全文を作って」より、「見出しの案だけ」「この表を整理するだけ」のほうが、確認が楽です。範囲が小さいと、見比べる場所も小さくなります。元の資料があり、答えの正解が決まっている仕事ほど、確認の手順も作りやすくなります。
(3)「分からないときは分からないと答えて」と添える
答えられないことは、答えないように頼んでおきます。「分からない場合は、推測せず、分からないと書いてください」と添えるだけでも、作り話を減らせることがあります。この効果は、使うサービスや頼む内容で変わります。実際の仕事で、一度試して確かめましょう。
(4)頼み方より、頼む仕事を選ぶほうが効く
ハルシネーションの影響を小さくする、いちばん確実な方法は、頼む仕事を選ぶことです。件数が多く、正解が決まっていて、間違えたことがその場で分かる仕事は、確認の手順が組みやすい仕事です。逆に、答えが1つに決まらず、間違いが後から見つかる仕事は、慎重に扱います。
職種別に、どこを見るか|確認の場所の早見表
確認の場所は、職種ごとに、間違いが混ざりやすい書類が決まっています。次の早見表は、判定表を職種に当てはめるための、仮の例です。
(1)職種ごとの確認ポイント
職種ごとに「元の資料」を決めておくと、見比べる作業が迷わなくなります。
| 職種 | AIに頼みがちな仕事 | 混ざりやすい間違い | 見比べる元の資料 |
|---|---|---|---|
| 営業 | 提案書・お礼メールの下書き | 取引先名、商談の日付、金額 | 商談メモ、見積書 |
| 経理 | 請求書や入金の整理、説明文 | 金額、計算、取引先名 | 請求書の原本、契約書 |
| 総務・人事 | 社内規程の案内、手続きの案内文 | 制度の内容、日付、手続きの順番 | 社内規程の原本、公式の案内 |
| 広報・採用 | 募集文、記事の下書き | 実績の数字、出典、固有名詞 | 社内の記録、公式の発表 |
(2)元の資料が決まっていない仕事は、先に資料を決める
見比べる元の資料が決まっていない仕事は、AIの前に、資料を決める仕事が必要です。「何と見比べるか」が決まらない場合、その仕事は確認できません。そのときは、判定表で一段深い確認にするか、AIに任せる範囲を小さくします。
確認の手間を減らした例|確認する行を絞る
確認をなくすのではなく、確認する場所を絞ると、仕事は軽くなります。自社の案件で、請求書と契約内容の照合を扱った例があります。
(1)人が目で確かめる行を、全体から絞り込んだ
広告代理店(3支店規模)の請求書照合では、人が目視で確認しなければならない行の割合を、関西で88%から17%まで下げました。関西支店では、625行のうち、人が確認する行が106行になりました。もともとは、関西支店だけで約560行を、手作業で月2日かけて確認していた業務です。
同じ案件では、契約が終了しているのに請求書に載っているケースを、実データから4件見つけました。この数字は、請求書と契約内容の照合という、正解が決まっている仕事での結果です。文章を生成する仕事の正答率や、時間の削減率を示すものではありません。
(2)この例から持ち帰れる考え方
確認の負担は、全部を見る負担から、見るべき行だけを見る負担へ変えられます。正解が決まる仕事は、機械が判定できる部分と、人が見るべき部分に分けやすい仕事です。自社の仕事で、同じ分け方ができるものがないかを、判定表を見ながら探しましょう。
【チェックリスト】AIの答えを使う前の確認項目
使う前のチェックリストの目的は、確認の抜けを、仕事ごとに同じ手順で防ぐことです。AIに頼んだ仕事を1つ選び、答えを使う前に、上から順に確認しましょう。
(1)頼むときの確認
頼むときは、資料と範囲と確認する人を、先に決めます。
- 元の資料を、手元に用意したか
- 「資料の範囲で答えて」と頼んだか
- 分からないときは分からないと答えるよう、添えたか
- この仕事の確認の深さを、判定表で決めたか
- 最後に確認する人は、誰か
(2)答えが返ってきたときの確認
返ってきた答えは、読む前に、確認する場所に印を付けます。
- 数字に印を付け、計算し直したか
- 会社名・人名・製品名・日付に印を付け、調べたか
- 出典は、自分で開いて、書いてある場所まで確かめたか
- 制度や法令は、公式の情報で最新の内容を確認したか
- 「推測」と答えられた部分を、優先して確かめたか
(3)使う前・出す前の確認
出す前に、確認した人と日付を、記録に残します。
- 判定表で決めた深さの確認を、終えたか
- もう一人が読む決まりの文書は、読んでもらったか
- 自分の言葉に直し、お客様に出せる文になっているか
- 間違いが見つかったときは、どこが間違っていたかを書き留めたか
(4)間違いが見つかったときの直し方
間違いが見つかったら、直して終わりにせず、同じ種類の間違いがないかを見ます。
- 間違った箇所を、元の資料で確かめる
- AIに「この部分が元の資料と違います」と示し、直させる。直った答えも、もう一度見比べる
- 同じ種類(数字、固有名詞、出典、日付)の箇所を、全部見直す
- 見つかった間違いを、判定表の見直しに使う
よくある質問
(1)ハルシネーションは、完全になくせますか?
完全になくすことはできないと考えて、確かめる手順を決めておくのが現実的です。頼み方の工夫や、元の資料を渡す方法で減らせますが、ゼロにはなりません。使うサービスの仕様は、各社の公式の説明で確認してください。
(2)AIの答えを、別のAIに確認させれば足りますか?
補助にはなりますが、確認の代わりにはなりません。別のAIも、もっともらしく答えるためです。根拠や前提を挙げさせて、人が見比べる場所を絞る使い方がおすすめです。
(3)全部の答えを確認すると、手間が減りません。どうすればよいですか?
確認の深さを、仕事ごとの判定表で変えます。自分だけが読むメモは浅く、お客様に出す文書や金額は深く確認します。確認する場所を絞る方法は、元の資料を渡して範囲を限る頼み方と合わせると、さらに負担を減らせます。
(4)社内で、確認のルールを決めるには、何から始めればよいですか?
まず、AIを使っている仕事を5つ書き出し、判定表に当てはめます。そのあと、確認する人と、見直す時期を決めます。ルールは細かく作り込まず、1枚の表から始めて、間違いが見つかるたびに直します。
次にやること
まず、AIに頼んでいる仕事を1つ選び、判定表に当てはめて、確認の深さを決めてください。
(1)自分の仕事を、1つ判定表に当てはめる
今週のうちに、1つの仕事で、確認の深さと確認する人を決めます。
- AIに頼んでいる仕事を、1つ選ぶ
- 「届く範囲」と「間違えたときの影響」を、判定表に当てはめる
- 決まった確認の深さで、次に使うときに確かめる
(2)社内の仕事に広げるときは、確認の担当と手順を一緒に決める
個人の確かめ方を、社内の仕事に広げるときは、確認する人と手順を先に決めます。もちもつの無料相談では、今どの業務でAIが使われているかを伺い、確認の深さと担当を決める進め方を一緒に考えます。ツールや契約が決まっていなくても、今の使い方の整理から始められます。
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